「不登校数4年連続減少」を考える

1.2005年度の不登校数 2.文科省の不登校の理解の仕方 3.都道府県別不登校数の増減
4.都道府県教育委員会のコメント 5.不登校対策は有功か 6.まとめ

1.2005年度の不登校数

2006年度学校基本調査(文部科学省 2006.5.01実施)
 
2005年度の不登校児童生徒数
    小学生  22,709人(前年度より 609人減少)
    中学生  99,546人(前年度より 494人減少)
    合 計 122,255人(前年度より1103人減少)

文部科学省は、「平成18年度学校基本調査速報」において、次のように発表しました。

「『不登校』を理由とする児童生徒数は、小学校2万3千人(前年度間より6百人減少。対前年度比2.6パーセント減)、中学校10万人(前年度間より5百人減少。対前年度比0.5パーセント減)の合計12万2千人(前年度間より1千1百人減少。対前年度比0.9パーセント減)で、4年連続減少。」

確かに、2001年をピークに4年連続の減少です。
しかし、児童生徒の総数との比率では、小学生は、0.32%(371人に1人)で横ばい。中学生は、2.75%(36人に1人、2002〜2004年度は37人に1人でした)で、0.02ポイント上がりました。

いわば、2005年度の減少は、総児童生徒数の自然減によるものです。
まだ、都道府県別の調査結果については公表されていませんが、地方紙を見てみると、都道府県によって増加、減少のばらつきが見られます。大阪府では、466人減と、中学生の不登校の減少が目立ちます。また、一方、神奈川県では、327人増と、その増加振りが目立っています。

また、今回の調査では、中学1年生での不登校数が減少していることが特徴でもあります。これは、中1ギャップといい、中学1年生で不登校が大幅に増えることに注目し、手厚い対策を行った結果とされています。(大阪府など)
もうひとつの特徴は、中学3年生で増加傾向にある点です。中学3年生では41,044人を数え、全体の3分の1強を占め、中学2年、3年では、全体の63%を占めます。

今回の文部科学省の発表は、きわめて控えめでした。また、新聞各紙の報道の仕方も、取り扱いに戸惑いが見られます。朝日新聞は、わずか5行の扱いでした。

2.文科省の不登校の理解の仕方

では、なぜ、効果が現れなかったのか。私には、文科省の不登校の理解の仕方に問題があるように思われます。

学校基本調査では、不登校の原因なり、要因として、「本人の問題」「家族の問題」「友達関係に問題」学習の遅れ」などとして捉える仕組みになっています。また、不登校の継続については、「情緒の不安定」「怠惰」「非行」などと分類するようになっています。

しかし、不登校の経験者への調査によると、学校や先生の課題や、いじめなどのもんだがクローズアップされてきます。
文部科学省をはじめとする教育行政や学校、先生達と、不登校の子ども達との間の認識のずれが生じています。

教育行政、学校、先生達は、不登校を、本人や家族の問題と捉える傾向があるのではないでしょうか。

不登校を生み出している、真の要因に目を向けないで、対症療法をしている限り、不登校をなくしていくことはできないでしょう。


3.都道府県別不登校数の増減

地方新聞のホームページを開くと、多くの新聞が地元の不登校数の増減を記事にしていました。

わかる範囲で、不登校数が減少した都道府県を見てみましょう。(前年比)
まずは小学生について。
滋賀、33人減の459人。(0.54%)
奈良、348人。(7.9%減)
京都、16人減の560人。(0.40%)
栃木、49人減の403人。(0.35%)
北海道、45人減の668人。(0.22%、−0.02)
岩手、19人減の145人。(0.19%、−0.02)
山形、3人減の167人。(0.24%、−0.08)
埼玉、1320人で減少。
東京、25人減の1045人。
岐阜、5人減の452人。
大分、29人減の194人。
次に、中学生について。
滋賀、37人減の1305人。(3.09%、−0.15)
三重、89人減の1456人。(2.62%、−0.12)
兵庫県、250人減の4335人。(2.69%、−0.06)
京都、44人減の1998人。(2.83%)
栃木、28人減の1964人。((3.24%、+0.03)
北海道、69人減の3172人。(1.99%、−0.01)
山形、58人減の757人。(2.02%、−0.1)
東京、61人減の7428人。


不登校数が増加した府県は、
小学生について。
兵庫県、4人増の832人。(0.25%、−)
富山、6人増の184人。(0.30%、+0.01)
青森、二十人増の223人。(0.26%)
広島、773人。0.01ポイント増え。44%。
愛知、34人増の1537人。
山梨、4人増の217人。
中学生について。
長野、73人増の2020人。(3.08%、+0.15)
福井、7人増の643人。(2.52%、+0.08)
岐阜、23人増の1743人。(2.77%、+0.07)
愛知、28人人増の970人。(2.89%、+0.01)
富山、31人増の767人。(2.52%、+0.13)
奈良、1278人。(1%増)
青森、74人増の1205人。(2.68%)
岩手、17人増の995人。(2.33%、+0.08)
埼玉、5899人、で01年以来の増加へ
広島、2488人。(2.98%)
岐阜、23人増の1748人。
大分、49人増の947人。
愛知、28人増の5970人。
山梨、43人増の795人。

徳島は、小中で81人減の707人。
大阪は、小学生1824人、中学生7974人で、減少。


4.都道府県教育委員会のコメント

都道府県ごとの資料(その3に掲載)を見てわかるように、不登校数の減少は、全国的な傾向ではありません。
総数において、かろうじて減少という結果が出たといえるのではないでしょうか。
それは、
小学校においては、前年比609人減の22709人、全体に占める割合は、0.32%と前年と同じ。
中学校では、数の上では、494人減の99546人ですが、割合では、前年比0.02ポイント増の2.75%
として現れています。

学校基本調査の速報を受けて各教育委員会がコメントを出していますので、見てみましょう。

2001年から減少を続け、今回中学校で増加した岐阜県教育委員会
 「急激な増加ではないので横ばいと捉えている。スクールカウンセラーなどによる相談体制を引き続き充実させていく。」

小中ともに減少させた大阪府教育委員会
 「府東欧を未然に防ぐlことに狙いをおいた小中連携の成果が出ている。」
    中学一年生への夏休み補習授業
    小学時代の元担任と中学校の現担任との共同家庭訪問
    小中学校の教員による相互授業参観    などの成果が出てきた。

山梨県教育委員会
 「人間関係を構築したりコミュニケーションを図るのが苦手な児童生徒が増えている。社会全体が夜型になり、起床できないなど生活リ   ズムがつかめず不登校につながるケースもあるのではないか。」


山形県教育委員会
 「05年度に中学校百二十三校中92校でスクーリングカウンセラーや教育相談員の配置が進んだ。小・中学校全体で不登校への問題   意識が高まり、指導体制が充実したのが、改善傾向につながった。」

岩手県教育委員会
 「中学校の中でも、一年生の不登校が前年度に比べ25人増えた。引き続き危機感を持ち、対応していきたい。」

青森県教育委員会
 「不登校が増加に転じたのは残念なこと。学校や家庭の事情、社会や経済の情勢などが複合的に絡み合っていると考えられるが、はっ  きりとした要因は説明しにくい。」
   

栃木県教育委員会
 八教育事務所ごとに対策チームを置くなど取り組みを強化。「小学校では効果が表れたが、中学校はこれから。」

京都府教育委員会
 「スクールカウンセラーの配置や、家庭での学習支援事業などの施策と、各学校の努力が数字に表れてきた。今後も不登校者を減らす  ために気を引き締めて取り組みたい。」

埼玉県教育委員会
 数、割合とも減少した小学生の不登校について(中学校は増加傾向)
 「スクールカウンセラーや、さわやか相談員の配置など、学校内での相談体制を充実させたことなどの結果と考えている。」「1320人と  いう数字は依然として憂慮すべきで、引き続き対策を取りたい。」

富山権教育委員会
 「中学の場合は、一年生が多く、進学による環境の変化などが要因。」

広島県教育委員会
 「スクールカウンセラーの派遣や保護者への支援も充実させ、組織的な体制で不登校対策に取り組みたい。」


5.不登校対策は有効か

もう一度、全体の傾向を振り返って見ます。

 前年度に比べて小学生609人、中学生494人、計1,103人の減少し、4年連続の減少となりましたが、割合(出現率)でみると、小学生は0.32%(317人に一人)で横ばい、中学生は2.75%(36人に1人)で、昨年度より0.02ポイント上昇しました。

 不登校児童生徒は122,255人を数えたが、学年が上がるほど不登校の数は増え、中2と中3が全体の63%を占め、中学3年生は41,044人で学年別では最高で全体の3分の1強を占めているそうです。また、中学1年生では、割合が減っているものの、中学3年生では、増加傾向にあるといいます。
 
 不登校数が増加した県は、不登校対策を何も行ってこなかったわけではありません。また、不登校数が減少した道府県が、特別な手だてを講じたとも思えません。もちろん、これまでの不登校対策に加え、新たな試みもありますが。
 
 全体を統括する文部科学省は、どのように捉えているのでしょうか。

 文部科学省は、中学生の出現率の増加については、「学校、家庭、本人などの問題が複雑に絡み合っており、一律に説明できない。今後も一人ひとりの状況に応じた支援を続ける。」としています。また、今回の状況については、「1時的な現象なのかどうか、来年以降の結果を見ないと、評価は難しい。」と慎重なコメントをしています。昨年までの姿勢とは異なっています。

 文部科学省をはじめ、各都道府県教育委員会は、これまでに不登校対策として、以下のような施策を行ってきました。
1.不登校担当の教員の配置
2.スクールカウンセラーの配置
3.適応指導教室の設置
4.SSN(スクーリング・サポート・ネットワーク)の整備
5.フリースクールのネットワークの整備
6.民間の学習塾やフリースクールとの連携
7.教育相談体制の整備
などです。文部科学省は、「NPO(民間非営利団体)との連携も含め、これまでの取り組みをさらに充実していく。」といいます。
 
 適応指導教室や児童相談所、民間支援施設で相談、指導を受けるなどして「出席扱い」となった小中学生は計16,908人だったそうです。前年度が、16,961人ですから、これらの施策も、効果は頭打ちの状態です。(ちなみに、パソコンなどを使った自宅学習で出席扱いとなったのは、130人だったそうです。)
 
 これらは、どの都道府県でも取り組まれているものです。これらの取り組み如何が、不登校数の増・減に影響を及ぼしたとは考えられないようです。

 むしろ、今回の調査結果は、これらの施策では、不登校問題を解決することができないことを示唆しているのではないでしょうか。不登校問題の解決のために、そろそろ視点を変えることが必要ではないでしょうか。

 
5.まとめ

文部科学省、「学校基本調査速報」"不登校数4年連続減少"を考える

「学校基本調査(2006.5.01実施)速報」による2005年度の不登校児童生徒数

    小学生  22,709人(前年度より 609人減少)
    中学生  99,546人(前年度より 494人減少)
    合 計 122,255人(前年度より1103人減少)

文部科学省は、「平成18年度学校基本調査速報」において、次のように発表しました。
「不登校を理由とする児童生徒数は、小学校2万3千人(前年度間より6百人減少。対前年度比2.6パーセント減)、中学校10万人(前年度間より5百人減少。対前年度比0.5パーセント減)の合計12万2千人(前年度間より1千1百人減少。対前年度比0.9パーセント減)で、4年連続減少。」

確かに、2001年の13万9千人をピークに4年連続の減少です。しかし、児童生徒の総数との比率では、小学生は、0.32%(371人に1人)で横ばい。中学生は、2.75%(36人に1人、2002〜2004年度は37人に1人でした)で、0.02ポイント上がりました。いわば、2005年度の減少は、総児童生徒数の自然減によるものです。

まだ、都道府県別の調査結果については公表されていませんが、地方紙を見てみると、都道府県によって増加、減少のばらつきが見られます。大阪府では、466人減と、中学生の不登校の減少が目立ちます。また、一方、神奈川県では、327人増と、その増加振りが目立っています。

また、今回の調査では、中学1年生での不登校数の減少が特徴でもあります。これは、「中1ギャップ」と呼ばれる"中学1年生で不登校が大幅に増える現象"に注目し、手厚い対策を行った結果とされています。(大阪府など)

もうひとつの特徴は、中学3年生で増加傾向にある点です。中学3年生では41,044人を数え、全体の3分の1強を占め、中学2年、3年では、全体の63%を占めます。

今回の文部科学省の発表は、きわめて控えめでした。また、新聞各紙の報道の仕方も、取り扱いに戸惑いが見られます。朝日新聞は、わずか5行の扱いでした。

文部科学省は、2003年4月、「今後の不登校への対応のあり方について」をまとめました。その中で、不登校の子ども達への積極的な関わりを推称すると共に、サポート・支援のネットワークなどの条件整備を唱えました。さらには、「ゆとり教育」を中心に据えた『教育改革』の推進によって、不登校を大幅に減らして行けると、豪語していました。
 そして、スクールカウンセラーの配置、適応指導教室の開設、スクーリングサポートネットワーク事業の推進など、を積極的に進めてきました。また、再登校につながった指導例などをまとめた事例集を編集し、不登校の子ども達への積極的な働きかけを奨励しました。

 これらの方針を受けた自治体や教育委員会の中には、「不登校ゼロ宣言」や「不登校半減3年計画」を計画、実践するところもありました。中には、子どもに寄り添い、すばやい対応によって、不登校を未然に防ぐことができた学校が生まれたり、再登校につながる取り組みが現れたりもしました。
そして、2002年以降、不登校は、わずかながらも減少していきました。しかし、この不登校数の減少傾向も、2005年には、小学校では横ばいになり、中学校では増加の傾向を示すようになりました。

 確かに、不登校の子ども達を支援し、サポートする取り組みは、これまでになく充実してきました。しかし、効果は、ごく1部にしか現れていません。文科省は、"もうしばらく経過を見る"、としていますが、今回の結果には、さぞ、がっかりしていることでしょう。

 では、なぜ、効果が現れなかったのか。私には、文科省の不登校の理解の仕方に問題があるように思われます。
 学校基本調査では、不登校の原因なり、要因として、「本人の問題」「家族の問題」「友達関係に問題」「学習の遅れ」などとして捉える仕組みになっています。また、不登校の継続については、「情緒の不安定」「怠惰」「非行」、また、それらの「複合」などと分類するようになっています。

 これに対して、不登校の経験者への調査によると、不登校のきっかけや要因として、「学校や先生の問題」、「いじめ」などの問題がクローズアップされています。文部科学省をはじめとする教育行政や学校、先生達と、不登校の子ども達との間の認識のずれが生じています。教育行政や学校、先生達は、子ども達の思いを受け止めることなく、不登校を、ややもすると、本人や家族の問題と捉える傾向があるのではないでしょうか。

 不登校を生み出している、真の要因に目を向けないで、不登校を子どもや親の問題として対症療法をしている限り、不登校をなくしていくことはできないでしょう。
 ちなみに、京都府でも小学生16人減の560人(0.40%)、中学生44人減の1998人(2.83%)で4年連続の減少です。しかし、その(比率)出現率は、いずれも全国平均を上回っています。