いじめ・不登校
長野県立丸子実業高校1年高山君の死


2005年12月6日未明、高山裕太君(16才)が命を絶ちました。

この少年は、長野県立丸子実業高校1年生で、バレーボール部に所属していました。
バレーボール部内のいじめや暴力によって、8月末から不登校になっていました。

 この事件は、テレビのワイドショーが取り上げましたが、長野地方の新聞以外はほとんど報道していません。テレビと新聞の報道から、自殺までの経緯を見てみます。
少年は声帯を痛め、声が出にくい状態であったこと。これを上級生などが真似て、からかうことがあった。
2年生部員が1年生部員をハンガーなどでたたくことがあった。

少年は、高校に入って2回家出をしているそうです。
母親は、いじめが原因としていますが、学校側は家庭に原因(母親の姿勢など)があったと言っています。
校長は2度目の家出の際に、「いじめが原因なら家出ではなく、不登校になるのでは。」と発言していたそうです。
少年は、8月末から、不登校になりました。

 9月26日にいじめていた部員が、少年に謝罪をし、握手を交わしたそうですが、27日以降も少年の不登校は続きました。
11月末、学校から「今の出席状況では、進級は無理だ。」との通知がありました。
12月のはじめ、学校と少年の家族との話し合いがあり、学校側から「出席できれば進級できるようにする。いじめなどがないように対処する。」旨の提示があり、12月5日から学校へ行くと少年との間で確認ができたということである。

 12月5日、少年は登校することができず、学校からは、明日(6日)登校するように電話で連絡があり、少年が対応しました。
12月6日午前6時半ごろ、自室で自殺した少年を母親が発見しました。

 少年の自殺をめぐって、母親と学校の意見に違いがあります。また、バレーボール部の父母会は「少年の自殺といじめとは無関係」との見解を出しています。

「お母さんが寝たので、死にます。」
少年の遺書です。

少年の死を受け止める姿勢が、残念ながら、学校にも父母会にも感じられません。

高山君へのいじめ、不登校への学校の対応に、疑義を覚えます。

先ず第1に、いじめへの対応です。

学校は、いじめの事実の確かめの後、いじめた者に少年への謝罪をさせ、握手を交わさせて、いじめの指導の決着としています。いじめが謝罪や握手によって解決できると本当に考えているのでしょうか。もし、そうならば、その見識を疑います。校長は、テレビのインタビューの中で、「物まねがいじめというならば、この世の中すべてがいじめになります。」と発言しました。高山君に寄り添ったいじめの理解ができていなかったようです。

この後も、少年は、登校していません。

第2は、不登校への対応です。

9月末から11月まで、少年に対してどのような指導なりかかわり方がされてきたのかは詳らかではありませんが、11月末には、「今の出席状況では、進級は無理だ。」という学校からの通知がされています。そして、12月初めには、登校を促しています。

不登校になってからの3ヶ月間、どのような対応がされてきたのかはわかりませんが、11月末の学校からの通知を見ると、少年の状況を把握し、支援をしてきたとは到底思えない対応です。

少年は、約束の12月5日、登校することができず、その夜から翌日の朝の間に命を絶ちました。

不登校になった子どもが、学校に行こうとする時にどれだけの勇気とどれだけの決意がいるのだろうか、想像するのは容易ではありません。体を震わせ、手にはいっぱい汗をかき、一歩一歩足を踏みしめ歩くわが子の姿に、そこまでの覚悟がいるのかと、その凄まじさを目の当たりにしてもなお、その心の内までは受け止めることは困難でした。

まして、いじめにあった子どもが、その只中に戻ることが、どれほどのものか。
留年、退学といった進路の選択をせまり、「明日から、学校に登校するように。」という指導が、どれほど少年を追い詰めることになるか、想像に難くありません。

手元にある情報だけでは、事の真相は判断しかねますが、学校の指導が少年を追い詰めたという点は、要因として免れることはできないでしょう。

高校は、義務教育ではありませんから、出席日数や成績によって、進級などの当否を判断する傾向があるようです。不登校の生徒への対応にもそうした面が反映されるのならば、不登校の子どもたちの中等教育からの排除につながりかねません。

今年、文部科学省は、初めて高等学校の不登校数を発表しました。その数は、実に6万7千500人を数えます。中には、中途退学や針路変更を選ぶ子どもたちもいますが、不登校でいる子どもたちは、高校で学び、卒業したいという願いを心の底に持っていると言えるのではないでしょうか。

高山裕太君の死は、高校生の不登校への対応のあり方を問うているような気がします。